難波裕美のひとり言

難波裕美

頌栄企画 マネージャー

難波 裕美

  • ・厚生労働省認定葬祭ディレクター
難波裕美のひとり言
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難波裕美のひとり言

葬儀後

長年連れ添った御夫婦でした。お子様がいらっしゃらなく、お二人仲睦まじく暮らしていたようです。
奥様が亡くなり、ご主人は大変悲しまれ、普段から病気がちでしたので、葬儀後に寝込まれてしまいました。葬儀の時も、『一刻も早く帰りたい。もうダメだ』と何度もおっしゃり、その度に『ごめんね、難波さんに弱音ばっかり吐いて』と、ご主人は言われました。お年を召しておられ、長年連れ添った奥様が亡くなられたのですから、仕方がありません。
しかし、葬儀が終わってからの方が、ご主人にとっては苦痛でした。葬儀後には、本当に沢山の手続きが待っているのです。疲れ切ったお体には、どれほど苦痛な事でしょうか。家庭の事は全て、奥様がされていたので、ご主人は何も分からない状態でした。ですから、少しでも力になって差し上げたいと私は思い『何かお困りの事がありましたら、遠慮無く申し付けて下さいね。いつでもお電話下さいね。』そう別れ際にお伝えしました。とは言っても、体外は何とか頑張ってしまわれるのが現状で、中々ご自分からは掛けづらいようで、掛けてこられる方は少ないのです。ご家族が近所におられたり、頼れる方で自由にお時間を使う事のできる方が近くにおられれば、済んでしまうので。ですから、本当にお身内の方が近くにおられない御高齢の方々には、一週間ぐらい過ぎた頃に、私の方からご連絡をさせて頂きます。これをきっかけにお電話を下さる事を願い...。

2〜3日を過ぎた頃に、ご主人からお電話を頂きました。後日、ご自宅にお伺いする事になり、日定を決め電話を切りました。
ご自宅にお伺いし、手続き書類を拝見し、一つ一つ確認をしながら、ご主人にご記入頂きました。普段し慣れない事ですので、ご高齢の方には一苦労です。次から次に書類を提出しなければなりません。しかも役所は融通が利きませんから、何か少しでも欠けているとやり直しです。お年を召してくると文字を書くことが困難になり、ましてや提出書類なので、余計に緊張をされ文字が書けなくなります。
以前、ご本人とご家族の方がご一緒に役所の窓口に行かれ、書類を提出した時の事ですが、役所の窓口の方が『こちらにご署名をお願いします。』と、書類をご高齢のお父様の前に置きました。お父様が文字を書く事が困難だったので、息子さんが署名をしようとしたところ『ご本人の署名でなくては受け付け出来ません。』と、役所の方に言われた事がありました。ご本人とご家族の方がご一緒におられるのに、どうして?なんて冷たいのだろう?思いやりはないのだろうか?私は、とても寂しい気持ちになりました。息子さんが『父は字が書けないんです。』と言っても受け入れてくれず、規則だからと言い切りました。お父様は、息子さんの手を借りながら、必死に署名をしました。涙が出るほど悲しかったです。ですが私は、それ以上に怒りを感じました。
私は仕事柄、役所に足を運ぶ事が多いのですが、とても親切な区役所・市役所も多くありますが、事務的で不親切な区役所・市役所もあります。区役所・市役所が親切なところは、区民や市民にも優しく、住みやすい町なのかも知れませんね。
これからの日本は、どんどん高齢化が進みます。ご高齢の方々の為にも、もう少し分かりやすいシステム作りや対応を望んでおります。大切なご家族が亡くなられたのです。悲しみや疲れ、色々な思いがある中で、それ以上悲しませることの無い優しい世の中になって欲しいです。ですから、少しでも私達がお役に立てたら?と思っております。

その後、ご主人から何度もお電話があり、その都度ご自宅にお伺いしました。そして『また来ますからね。お電話下さいね。待ってますから。』と言うと、ご主人は『電話頂戴なんて、なんか恋人同士みたいだね。(笑)』なんておっしゃり『今日は久し振りに、人間と話が出来たよ。有難う。』とニコニコされ私を送って下さり、お別れをしました。

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