難波裕美のひとり言

難波裕美

頌栄企画 マネージャー

難波 裕美

  • ・厚生労働省認定葬祭ディレクター
難波裕美のひとり言
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難波裕美のひとり言

納得できない

先日、ご主人様が入院中で"万が一の時に慌てたく無い""病院の葬儀社には任せたくない"との奥様の御意向があり、事前相談をさせて頂き、お見積りを出して参りました。
残念な事に、ご主人様は翌々日にお亡くなりになってしまいました。そして御葬儀の為、再度お見積りをたてさせて頂きました。

御家族のご希望は、火葬場併設の式場での御葬儀でした。
ですが、式場が大変混雑していた為に、御葬儀の日程が一週間先になってしまいました。都内の火葬場併設の式場は、特に夏場と冬場が混雑をし、一週間先にな る事があります。その様な状況に奥様は納得が出来ず、『こねがあったり、知り合いを優先に入れさせているんじゃないの?』と不信感を抱かれました。(その 様な事は、決してございません。)
そして、日程が延びてしまった分、ドライアイスが必要になり、ご主人様をお預かりする御安置の費用も掛かってしまう事に、更に御納得して頂けず、奥様はか なり怒っておられました。ご説明をし、私が『御納得頂けましたか?』そう尋ねますと『納得できない』と。ですが、空いている他の式場をお勧めしても、『式 場はここでなければ駄目です。』と奥様はおっしゃるのです。火葬場併設の式場以外では、葬儀をしたくは無いとおっしゃるのです。

色々とご提案をさせて頂いたり、ご説明をさせて頂き『御納得頂けましたか?』と私は再度、奥様に尋ねました。奥様のお答えは『納得できません。』私は『御 納得頂けない部分はどちらですか?』と尋ねました。すると奥様は『全部が納得できない。』そうおっしゃるのです。私はとても驚きました。私は、普段通り、 いいえ、それ以上に時間を掛けて、各項目ごとに丁寧にご説明をさせて頂きました。ですが、全く納得して頂けないなんて...。

その後、何時間奥様とお話をさせて頂いたことでしょうか...。私は最後にもう一度『御納得頂けましたか?』と尋ねました。すると奥様から『納得できないけど仕方がない。』そうお答えが返ってきました。私は、少し(かなり?)驚きました。
私は『御納得頂けないのでしたら、ご主人様の御葬儀をお手伝いさせて頂く事は出来ません。お疲れですし、お忙しいでしょうが、他社からもお見積もりを取ら れたら如何ですか?』『ご面倒だとは思いますが、ご主人様の最後ですから、奥様が御納得頂ける形が一番よろしいかと思います。』と申し上げました。
私はどうしても、御家族に御納得頂けないまま、御葬儀のお手伝いをさせて頂く事が出来ません。自分の無力さもあったと思いますが...。
このまま御葬儀をお手伝いさせて頂いたとしても、必ずしこりが残ってしまいます。ご家族にとって、それはとても悲しく、申し訳無い事です。

奥様は他社から見積もりを取る事はしませんでした。
私は奥様に対して"なんてわがままな人だろう"そう思っておりました。次から次と、難題を持ちかけてくるのです。ですが私は、私に出来る事なら何でもして 差し上げようと思い、ノートに事細かに記しました。『親戚には、こう言って、これは言わないで!会葬者はこうだから、こうよ。』そして、お料理をお出しす る順番、テーブルに並べる順番、飲み物、全てに至るまでも決められました。奥様は、ちょっと口調が強く、ご親戚の方々と良く言い合いになっていました。
私も、奥様の様な方は初めてでした。ただ、お話をしていて、"あ~寂しいんだな~"そう思いました。

二日間の葬儀が終わり、何日か過ぎた頃に、奥様からお手紙が届きました。
そのお手紙を拝見し、私は驚きと共に涙が溢れてきました。それはそれはご丁寧な、心温まるお手紙でした。
接していた時の奥様の少し冷たいような、厳しいような、キツいような...。
そして"きっと、ご主人様の御葬儀を満足をして頂けなかっただろうな~"と思っていた私の心の中の氷を、一気に溶かして下さいました。今までに無い、お誉 めの言葉や感謝のお気持ちが、事細かに書かれ、私の宝物になりました。このお手紙に大変励まされ、これからも日々勉強をし、御家族の方々から気軽に何でも 話のできる、そのような葬儀社で有り続けたく、心から感謝を致しました。
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